気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)

当社グループは「事業創造を通して、社会に貢献できる」企業を目指し、社会的課題を解決するサービスを創造し、事業を通じた社会課題の解決や地域貢献に取り組んでいます。

こうした中、近年の世界的な気候変動や自然災害による被害の深刻化を踏まえ、気候変動が当社グループに与える影響を的確に把握するとともに、気候変動に関する対応を優先事項の一つとして捉え、CO2 排出削減を含む様々な環境対応策を積極的に推進することにしました。

今後は TCFD の枠組みに沿って、気候変動が当社グループの事業に影響を及ぼすリスク・機会を分析し、経営戦略に反映するとともに、提言に基づいた情報開示に取り組んでまいります。

TCFD Task Force on Climate-Related Financial Disclosures

ガバナンス

当社グループではサステナビリティ委員会を設置し、環境面や社会からの要請課題について検討しています。原則として四半期ごとに開催としながら、必要に応じて適宜開催としています。また、リスク・コンプライアンス委員会で検討した経営活動上やビジネス上のリスクとの関連性を整理した上で、発生の可能性や頻度、発生した場合の影響を評価、重要性を識別し、必要に応じて執行役員会または取締役会に報告するなど、取締役会による監督体制のもと、当社グループの戦略に反映し、対応しています。

運営体制

運営体制図

シナリオ分析

分析方法

対象範囲

当社グループ全体

重要度の定義

気候変動の財務影響を評価するにあたり、影響の区分は、金融商品取引所の適時開示基準のうち「業績予想の修正、予想値と決算値との差異等」及び「災害に起因する損害または業務遂行の過程で生じた損害」に関する基準を準用し、連結売上高の10%増減もしくは連結純資産の3%増減が予想される場合を影響「大」としました。
なお、シナリオ分析の定量情報は、参照シナリオ等を基にした当社の判断に基づくものであり、分析精度の向上に留意していますが、多くの不確実な要素を含むものです。

影響の区分 基準 金額
連結売上高に対する比率: 10%以上 55億円以上
連結純資産に対する比率: 3%以上 13億円以上
連結売上高に対する比率: 5%以上10%未満 27億円以上55億円未満
連結純資産に対する比率: 1.5%以上3%未満 6億円以上13億円未満
連結売上高に対する比率: 5%未満 27億円未満
連結純資産に対する比率: 1.5%未満 6億円未満

※ 2023年3月期実績をベースに算出

シナリオの設定

シナリオ分析の検討に際し、国際的な信頼性が高くTCFD提言においても引用参照され、多岐にわたる事業領域をカバーできる国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)及び国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)が発行する資料等を参照し、以下の2つのシナリオを設定しました。

設定シナリオ 2℃未満 4℃
世界観 平均気温の上昇を2℃未満に抑えるべく、大胆な政策・法規制が実施されるとともに、技術革新が進む。
脱炭素社会への移行に伴う社会変化が事業に影響を及ぼす可能性が高い社会。
様々な政策・法規制を推進せず、物理的リスクが高まる。温暖化がさらに進み、集中豪雨や洪水など自然災害が激甚化する。
気候変動が事業に影響を及ぼす可能性が高い社会。
参照
シナリオ
移行面 IEA WEO2021
IEA NZE2050 等 IEA STEPS 等
物理面 IPCC(AR6)SSP1-1.9 等 IPCC(AR6)SSP5-8.5 等
リスク及び機会 移行面でリスク及び機会が顕在化しやすい 物理面でリスク及び機会が顕在化しやすい

分析結果

分類 事業インパクト 時間軸
(※1)
影響
2℃未満 4℃




政策・法規制
  • 炭素税の導入等による CO2排出に対する課税
  • 燃料コスト等の事業コスト増加
中期~
長期
技術
  • 環境負荷を考慮した製品・サービスの購買コスト増加(電力、紙製品等の事務用品、EV等)
  • ZEB、ゼロカーボン建築によるBPO拠点新規建設費用増加
短期~
長期
市場
  • オートモーティブ事業におけるEV対応のニーズに追いつけない
  • 脱炭素社会へ向けた生活様式の変化に伴うサービス提供のニーズに対応できない
短期
(※2)

(※2)
評判
  • 気候変動対策の遅れによる株価・売上への影響、取引機会の損失
  • 人財確保の困難化
短期
(※2)

(※2)




急性
  • 台風・豪雨・洪水等の自然災害でBPO拠点が運営停止することによる収益減少
  • 被災したBPO拠点における事業継続のためのインフラ等の復旧コスト発生(移転コスト含む)及び資産価値の減少
  • 台風・豪雨・洪水等の自然災害による出勤不可の従業員発生
中期
(※3)

(※4)
慢性
  • 気温上昇により予想される従業員の体調不良(熱中症、感染症の拡大、呼吸器疾患の増加等)を軽減するための就業環境整備コスト増加
長期

エネルギー源
・資源の効率性
  • エネルギー効率の良いBPO拠点の建設、運営
長期
(※2)

(※2)
サービス・市場
  • 企業のBCPニーズの高まりに伴う新規受託業務の獲得
中期~
長期

(※2)

(※2)
  • オートモーティブ事業におけるEV対応のニーズの高まり
短期
(※2)

(※2)
  • 脱炭素社会へ向けた生活様式の変化に対応したサービスの創出
中期~
長期

(※2)

(※2)
レジリエンス
  • 各BPO拠点間でのバックアップ体制強化による事業の継続、安定化
長期
(※2)

(※2)
  1. ※1 リスク・機会の本格化までの時間軸 短期:2025年、中期:2030年、長期:2050年
  2. ※2 現段階では十分な情報収集が困難であり、事業及び財務への影響度の評価が難しい状況です。
  3. ※3 2℃未満シナリオにおいては、台風・豪雨・洪水等の自然災害の頻度が増すものの、BPO拠点所在地での事業継続に直接影響を及ぼす自然災害は発生しないと想定しています。
  4. ※4 4℃シナリオにおいては、影響が最大となる場合としてBPO拠点の1つが浸水して運営停止する程度の自然災害が発生することを想定しています。

戦略

  • 当社グループは、東北地方を中心にコンタクトセンター(BPO拠点)を運営しています。Scope1、Scope2におけるCO2排出の主な原因は、BPO拠点における電力及びガスの消費、ロードサービスにおけるサービスカーの燃料消費です。
  • CO2排出量削減のため、再生可能エネルギー導入やロードサービスにおけるサービスカーのEVへの入れ替えを進めてまいります。 CO2排出量削減は、環境負荷の軽減のみならず、炭素税の課税による財務影響の緩和という効果もあります。
  • 移行リスクについては、2℃未満シナリオ及び4℃シナリオのどちらにおいても政策・法規制によるコスト増のリスクが抽出されました。しかしながら、2030年時点を想定した当社グループへの財務影響は下の表の通りであり、上記の施策を進めることで財務影響は「小」と評価しました。
  • 物理リスクについては、4℃シナリオでは海面上昇に加えて自然災害の激甚化と頻度増がより大きくなると予想されるため、主に水害によりBPO拠点の運営に影響が出るリスクが抽出され、財務影響は「大」と評価しました。BPO拠点新規設立の場合の立地条件の厳格化や、BPO拠点同士のバックアップ体制の強化をさらに進め、事業継続への影響を最小限に抑える施策を進めてまいります。同時に、従業員の安全確保のため、災害訓練を継続実施し、備蓄物の内容・量を見直します。
  • EV関連の顧客ニーズについては、当社グループにとってリスクであり機会でもあります。当社グループでは研修施設「富山トレーニングフィールド」を有しており、主にロードサービスについての研修を効率的・集中的に行うことができるため、EVへの対応強化を進めることで、機会となると認識しています。

2030年時点を想定した当社グループへの財務影響

2020年度の排出量を基礎に試算すると炭素税額は約124百万円となりますが、当社のCO2排出量削減目標達成に向けて再生可能エネルギー、EVを計画的に導入することで炭素税は約62百万円に削減できると試算しています。

項目 財務影響額
炭素税 ※1 62百万円
再生可能エネルギー導入コスト 11~25百万円
カーボン・オフセットコスト ※2 7~98百万円
  1. ※1 2030年における先進国の炭素価格:USD130(IEA NZE2050)を元に算出。為替レートJPY/USD 133.53(2023年3月31日)
  2. ※2 2022年4月のJ-クレジット平均販売価格、グリーン電力証書の価格を元に算出。

リスク管理

気候関連のリスクを選別・評価するプロセス

当社グループではサステナビリティ委員会において環境面や社会からの要請課題やリスクを抽出し、リスク・コンプライアンス委員会においては、検討した経営活動上やビジネス上のリスクを検討しており、両委員会で検討した課題やリスクについてそれぞれ関連性を整理し、当社グループにとって重要な気候変動に伴うリスクと機会を選別しています。その上で、選別した気候変動に伴うリスクと機会について、発生の可能性と事業への財務的影響に基づき、その重要性を評価します。

気候関連のリスクを管理するプロセス及びその総合的リスクマネジメント体制への統合状況

従来、リスク・コンプライアンス委員会において当社グループのリスク管理の方針の決定、リスク管理規程の整備、運用状況の検証、危機発生時の対応、その他リスク管理全般に関する事項について整備を行ってまいりました。気候関連のリスクについては、これらに加え、環境・社会課題の解決に向けた取り組みについて議論する機関として設置したサステナビリティ委員会において、事業活動に関連する気候関連のリスクの抽出・検討を行い、影響度の大きい重要リスクを特定し、関連する移行リスクや物理リスクについて、TCFD提言のフレームワークに沿ってシナリオ分析を含む識別・評価を実施します。
抽出されたリスクについては、リスク・コンプライアンス委員会及びサステナビリティ委員会のもと、関係部門が気候変動に対する施策について立案、実行、報告し、両委員会が連携してその進捗確認を行います。さらに、サステナビリティ委員会は当社グループ全体の対応状況を集約し、協議した上で取りまとめ、重要な事項については代表取締役統括のもと、執行役員会及び取締役会に報告し、取締役会による監督体制のもと、当社グループにおける企業リスクとして当社の戦略に反映し、対応しています。

目標

当社グループは、シナリオ分析結果を踏まえ、気候変動に伴うリスク低減のため、CO2排出削減目標を設定しました。

指標 目標内容
2030年 2050年
CO2排出量削減率
(Scope1・2、2020年度比)
50% 100%(ネットゼロ)

過去のCO2排出量実績及び2030年・2050年目標

【単位:t-CO2】

項目 2020年度
実績
2021年度
実績
2022年度
実績
2030年
目標
2050年
目標
Scope1 ガソリン、軽油由来 3,101 3,423 3,802 1,550 0
LPG、LNG、都市ガス由来 1,366 1,633 1,566 683 0
Scope1 排出量計 4,467 5,055 5,367 2,234 0
Scope2 Scope2 排出量計 3,375 3,692 4,037 1,688 0
Scope1・2 排出量合計 7,842 8,748 9,405 3,921 0
  • ※ 一部の海外子会社の電気使用量が不明な場合は、電気料金、その国の電気料金相場、事務所の面積などから概算を算出しています。

CO2排出量削減への取り組み

当社グループは、気候変動に伴うリスク低減のためのCO2排出量削減目標達成に向け、以下の取り組みを行っています。

Scope1(燃料の燃焼などによる直接排出)

当社グループの社用車約450台のうち、2030年までに約240台を目標に順次EVに入れ替えを実行します。

→2030年までに年間1,000t-CO2削減見込み

各BPO拠点で使用している都市ガス等を2030年までにCNガス(カーボンニュートラルガス)に順次変更します。

→2030年までに年間約1,300t-CO2を削減見込み

  • ※ 第1弾として2023年1月に富山BPOタウンより導入 → 年間約470t-CO2削減

2030年までに各施策を行った場合に想定されるCO2排出削減量

【単位:t-CO2】

項目 年間削減量
Scope1 ガソリン、軽油由来 1,000
Scope1 LPG、LNG、都市ガス由来 1,300
Scope1 合計 2,300

車両のEV化対応について

グループ会社の株式会社プレミアアシストはEV充電スタンドの設置業務を行っています。当社グループ内においても、直営の営業所や国内BPO拠点に設置しており、国内におけるEV充電サービスのインフラを構築の一助となることを目指しています。その一環として、EVが走行中に電池切れしてしまう「電欠」を起こした際に現場へ駆け付けて充電する「EV駆けつけ充電サービス」を全国47都道府県で提供しています。

今後も、モビリティ社会を取り巻く新たな需要への対応をはじめ、社会や環境の変化により求められる問題解決を目指し、サービスやシステムの開発に取り組んでまいります。

Scope2(電気などの使用に伴う間接排出)

2030年までに全BPO拠点における再生可能エネルギー利用率100%を目指し、以下の施策を行います。

環境対策モデル施設「岩手BPOフォートレス」

2024年開設予定の「岩手BPOフォートレス」を再生可能エネルギー100%利用のモデル施設と位置付け、その後の施設建設、施設改築の基準とします。

  • 建設時に、駐車場約505台分のスペースを電力会社と提携しPPA(Power Purchase Agreement)を活用し、岩手BPOフォートレスへの電力供給及び、余剰電力を電力会社を通じて他のBPO拠点へ送電

既存BPO拠点及び新設BPO拠点での対策

  • 最新の省エネ対応機器(照明、空調、通信機器など)を導入を進める
    →2020年度比10%削減見込み
  • PPA(Power Purchase Agreement)を活用し、BPO拠点全体で最適な電力利用モデルを構築
  • 既存の大型BPO拠点に関しても、電力供給企業とパートナーシップを組み、施設の改築、メンテナンス計画に合わせて、岩手BPOフォートレス同様に駐車場スペース(その他施設内空地利用)を活用しPPAモデルで自家消費と、太陽光発電が不向きな拠点へ送電を実施
    →2020年度比35%削減見込み

削減できないCO2排出についてはカーボン・オフセット制度の利用を想定

→2020年度比55%削減見込み